大阪の庶民食 “バッテラ” が大好きで大人になった僕は、 “鯖” を食べると言えば、まずは酢で締めたもの、次いで煮付けか塩焼きが思い浮かび、刺身などの生食というイメージはない。
実際、鯖は鮮魚のなかでも一番傷みやすい魚で、“鯖を読む” という言葉の語源も、サバがあまりにも腐りやすいために、急いで鯖の数を数えなければならなかった、という事から出来たことわざだとか。
そんな足の早い鯖を、しゃぶしゃぶと刺身で食べさせてくれる、しかも最高に旨いっ! という店があると聞いて、サバ好きの僕は姫路まで向かった。
坊勢島へ!
関西人でもあまり知らない “坊勢島” は瀬戸内海の東に浮かぶ「家島諸島」の一つで、姫路から南西約18kmの播磨灘に位置する小さな島。
島自体がいわゆる漁師町で、漁獲量、水揚げ金額ともに兵庫県一を誇ります。多くの方が漁業に携わり、漁師の数は500人、漁船は約1,000隻にものぼる。港には色とりどりの漁船がわんさかと停舶されていました。
“漁師の島” なので、観光資源はほぼ皆無と言ってよい。 フェリーが発着する坊勢島奈座港の入口に、漁師の守護神 “弁財天” を祀る弁天島がぽっかり浮かんでいるのと、あとは、家島諸島の島々が俯瞰できる「かしわの山展望台」があるぐらい。
坊勢島へのアクセスは、大阪から電車とバスを乗り継いで姫路港まで1時間半ぐらい。姫路港から坊勢島まで小さな定期船で約30分。連絡時間を入れても2時間ちょいなので、そんなに気合いを入れて早起きしなくても、お昼ごはんには十分間に合います。
姫路が誇るブランド鯖 “坊勢鯖”
歴史好きの僕は “鯖街道” の印象が強くて、関西近海のサバ = 日本海というイメージがあるのですが、瀬戸内は播磨灘にも “坊勢鯖” というブランド鯖があるのをご存知でしょうか?
坊勢鯖とは、坊勢漁協のまき網船団がストレスを与えないように漁獲した真鯖を、大型の生け簀で自然に近い状態で畜養した鯖のこと。餌には播磨灘で獲れたイワシ等を使用し、その魚体はよく肥え、脂ののった中にもサバ本来の豊かな旨味があるとして、兵庫県認証食品にも認証されています。
乱菊すし
坊勢島のフェリー乗り場から徒歩5分の小さな寿司店 “乱菊すし” 。 気さくで饒舌な大将と、物静かな女将の2人で切り盛りされている家庭的な雰囲気のお店です。
座敷に準備して頂いていた、乱菊すしの冬季限定メニュー「坊勢鯖のしゃぶしゃぶ」は、こちらの大将曰く、日本で唯一この店でしか食べれない逸品。
鯖を皮ごと頭から尾まで縦に薄くスライスした珍しい捌き方は確かに他では見た事がない。聞くと、これも魚が新鮮で、身が分厚くてしっかりしているからこそ出来る芸当だという。
早速、大将のご指導通りに、きれいな切り身を鍋のお出汁に一往復半、しゃぶしゃぶと泳がせる。
たっぷりの大根おろしとポン酢でいただく。
いやいや。上品な脂がのってて何とも旨い !
客が店に到着する時間に合わせて生きた鯖を仕入れ、新鮮で身が締まっているうちに捌くから可能となる、“究極の鯖しゃぶ” 。電話で予約を入れた際に「この時間のフェリーに乗ってお越し下さい」と船便まで指定されたので、何故かな?と思っていたのですが、その理由が一口食ってよく分かった。
「鯖のコース」は、しゃぶしゃぶの他にも、鯖の握り寿司と刺身も味わうことができます。 酢で締めた鯖寿司も大好きですが、こちら小ぶりな鯖寿司もほんのりとした甘さがあってかなり旨い。刺身も程よい弾力があって、コリコリとした食感もよく、酒がよく進む。
僕が “乱菊すし” に、伺ったのは鯖シーズン真っ最中のランチタイムですが、平日だったので、僕と同行者の他に、あとお客さんは1組だけ。ゆっくりと坊勢鯖を丸ごと一本美味しくいただく事ができました。
最近はテレビにも出たりと、人気のあるお店の様なので、冬季(鯖シーズン)の週末は混み合う事も多いみたい。早めに予約する事をお勧めします。
離島という場所柄、しょっちゅう気軽に行けるというお店ではありませんが、鯖好き、青物好きなら、足を運んでみて損はない名店だと思います。
では、また!
今回行った場所
乱菊すし 食べログ