
メインダイニング錦
日本有数の温泉地である熱海の景勝地、錦ヶ浦の海食崖を巧みに利用して建てられた、白亜の建物 ホテルニューアカオ 。
およそ30万年前まで活動していた多賀火山の噴火口の名残である岩盤と一体化する特異な環境や、海上にそそり立ち、相模湾に向かって羽ばたく白鳥を思わせるダイナミックな佇まいが独特の存在感を示している。
同ホテルは 1973年(昭和48年)に開業。昭和の好景気時代の当時、熱海は新婚旅行や団体旅行などで多くの観光客が押し寄せていた。なかでもホテルニューアカオは熱海の温泉宿を牽引し、ランドマークホテルとして親しまれてきた。
土産物店、赤尾百貨店、赤尾旅館 を開いた創業者 赤尾蔵之助が、錦ヶ浦に気宇壮大なリゾートホテルを建てようと一念発起して造ったというホテルは、やはり建築自身にも相当気合いが入っている。
海に迫り出すように聳え立つ建物は、建設開始当初、関係省庁になかなか許可が下りず、霞が関ビルディングを手がけた国内有数のチームが設計を担当し、PSアンカー工法という数万本のピアノ線を基礎岩盤に固定する方法により建設許可が下り、海上に建つホテルは実現化したという。
豪奢なスワロフスキーのシャンデリアが出迎えるロビーの窓からは熱海の町が一望できる。ローマ宮殿をイメージして作られたという「メインダイニング錦」に設けらた壁一面のガラス窓からは錦ヶ浦の絶景が望める。
ホテルニューアカオは2棟で構成されていて、それらが長い廊下で繋がっており館内がとても広い。ラウンジ、大浴場、展望貸切風呂、露天風呂、プール、ゲームコーナーなどを備え、館内を散策しているだけで、子供の頃に旅先で覚えたワクワク感を味わう事ができる。
ニューアカオに新婚旅行で訪れた昭和世代が、子供や孫を連れて再び当ホテルに泊まるというケースも少なくないという。実際、宿泊客の年齢層はバラエティーに富んでいた。
350室ある客室はすべてがオーシャンビューで、眼前いっぱいに水平線が広がり、紺碧の海から朝日が昇る美しい景色を堪能できる。
ホテルニューアカオは、日本の高度経済成長期からバブル経済の崩壊、そして近年のコロナ禍など、今日に至るまでの日本社会の変化を半世紀に渡って見てきた歴史がある。 コロナ禍の2021年には閉館が突如発表されたが、2023年に晴れてリニューアルオープンした。
改修工事では、現代的な設備を取り入れつつも、昭和レトロな雰囲気を残すという試みがなされ、どこか温かい懐かしさを感じる事ができた。
熱海温泉ホテルニューアカオ 公式HP