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三重

「六華苑」ジョサイア・コンドルの麗しき洋館を訪ねて

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六華苑へ!

東海道五十三次の宿場町、そして伊勢湾の湊町として栄えた 三重県 桑名くわな

六華苑ろっかえん は、桑名の山林王と呼ばれた実業家、諸戸清六の邸宅として大正2年に竣工した建築だ。広大な敷地に洋館と和館を併設し、雅な庭園を構えるのが往時の実力者のステイタスであり、一種の流行りでもあった様だが、当邸宅も同様の設計となる。

六華苑の洋館を手掛けたのは、日本近代建築の父と呼ばれたイギリス人建築家 ジョサイア・コンドル 。辰野金吾や片山東熊らを育成し、自らも建築家として鹿鳴館や財閥系の邸宅などを設計し、日本の近代化に大きく貢献した人物だ。

コンドルの作品のうち現存するそのほとんどは東京にあるが、都内以外の地方に唯一 現存するのが六華苑となる。

六華苑はコンドル設計の洋館に、諸戸家お抱えの大工棟梁である伊藤末次郎が設計した和館を見事に組合せたのが特徴のひとつだ。

これほど大規模な和館を接続させた設計は類を見ず、芝生がある南側から見た時の一体感は特に素晴らしい。向かって右手に洋館、左手に和館。洋館の北東角には四階建ての棟があり、そこから二階建ての洋館、和館の二階部分、そして平屋部分へとなだらかに繋がってゆく。

棟部分のスカイブルーから洋館のクリーム色、 瓦屋根のグレーへと色が移り変わっていく様も、緑の芝生や青い空に映えて美しい。一部に改築と戦災の影響を受けているが、ほぼ創建当時のままの姿を残している。

重厚な装飾性を持つデザインが多いコンドルの建築でありながら、装飾性が抑えられた外観同様、洋館内部も華美な装飾を控えた木造ヴィクトリア朝のすっきりとした空間だ。

広い玄関ホールを中心に客間や食堂、階段を配するというコンドルが好んだ構成に加え、 庭園に面した一階にはベランダ、二階には多角形に張り出したサンルーム設けるといった手法は、東京の旧岩崎邸にも共通するコンドル流の空間演出でもある。

一方、コンドルの洋館と繋がる和館は、日本の伝統的な和風建築で、書院造を基本としながら茶室のような数寄屋風の要素も取り入れられている。障子や欄間の意匠にも繊細な細工が見られる。また、広縁や庭園と一体化する開放的な設計で四季折々の景色が楽しめる。

決して意匠面での派手さはないが、六華苑には和館の一の間から眺める庭の風景、離れ屋の特徴的な無双窓、池の水面に映る優美な外観など、絵になる風景が各所に点在し、往時の大実業家の暮らしぶりを伺い知ることができる。

今回行った場所

六華苑 公式ホームページ



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