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「尾道ガウディハウス」昭和レトロな和洋折衷モダン住宅に泊まる

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S.L
尾道ガウディハウスへ!


尾道ガウディハウス(旧和泉家別邸)昭和8年

古くから交通の要衝であった 尾道おのみち は江戸時代には北前船の寄港地として栄えたみなとまちだ。

海岸線が迫る山の斜面には歴史ある寺院が立ち、細い路地が縦横無尽に走っている。尾道を舞台とした文芸作品や映画作品も数多く存在し、“文学の街” “映画の街” としてもよく知られている。

穏やかな海に面し、坂道と細い路地が織りなすノスタルジックな街並みは、どこか神戸の塩屋とよく似た雰囲気を感じる。




尾道ガウディハウス(旧和泉家別邸)

泊まれる登録有形文化財


二階座敷

ガウディハウスは尾道駅北口から徒歩二分ほどの傾斜地にたつ、築90年を超える住宅建築だ。

石垣の上にそびえるように建つ複雑な姿と、独特の力強いディテールから「尾道ガウディハウス」と呼ばれ、映画やアニメなどにも登場する名所となり地域住民にも古くから親しまれている。

この住宅は、尾道市三軒家町で箱物の製作販売を手がけていた和泉茂三郎氏が、 昭和8年に「離れ・別宅」の用途として建設したもので当時の棟札も残る。


二階 次ノ間・露台

1982年頃までは和泉氏親族の住居として使われていたが、以降は25年あまり空き家だったという。2007年より保存再生活動が行われ、現在は一棟貸切りのゲストハウスとして多くの旅客を迎え入れている。

ガウディハウスの愛称は、随分前からそう呼ばれており、スペインのザグラダファミリアのように「いつ完成するか分からない」という意味合いや、木造建築には珍しく曲線が多いこと、窓や飾り窓など装飾性が高いことに由来しているとの事だ。

二階 洋間

大正から戦前昭和の時代にはハイカラな洋風建築が流行し、尾道にも多くの擬洋風建築が建てられた。ガウディハウスもそのひとつで、わずか10坪の狭い建物の中に当時流行した技法が散りばめられた、モダンな洋館付き住宅となっている。

往時、執務室として使われたという洋館部の二階は漆喰塗りで仕上げられ、外壁は着色したセメントを叩きつけたドイツ壁とし、擬洋風建築らしい上げ下げ窓が採用されている。


二階 階段室

ガウディハウスは腕利きの一人の大工が三年をかけて建てたというが、アールを描く階段は特に腐心したところで、この階段だけで一年を費やしたと伝わる。

総じてこの建築は、近代和風建築がその技術の最高潮を迎えていた昭和初期の貴重な遺構であるとともに、現代の建築技術を持ってしても再現が困難な意匠を持つ和洋折衷住宅と称されている。

二階 階段室・廊下・座敷

尾道、空き家再生活動のシンボル


一階 和室六畳間

ガウディハウスがある尾道の山手には、寺社、民家、洋館に洋館付き住宅など、多様な建築物が密集しそれらが細い路地で繋がるという独特な都市景観が形成されている。

戦前に開発された山手傾斜地の住宅は、建築基準法における接道要件や崖地安全条例等から老朽化しても建て替えができず、また高齢化の時代背景などもあり、空き家が増加の一途を辿っているという。


一階 台所

そんな状況を憂いで立ち上がったのが、NPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」だ。

尾道空き家再生プロジェクトとは、尾道に点在する様々な魅力を持った空き家の新たな活用方法を模索し、後世に残すべく再生するという地元の民間団体だ。活動を通じて、他にはない尾道らしいまちづくりの展開を目指している。

これまでに20棟以上の空き家を再生させた実績を持つ当プロジェクトの第一号作品が「尾道ガウディハウス」である。

2007年に代表の豊田雅子氏が、自らガウディハウス(旧和泉家別邸)を購入し建築再生に着手。日々、再生に奮闘する代表の思いに共感する仲間が集まり、それがやがて「尾道空き家再生プロジェクト」という大きな輪になったという。

今回、撮影取材にあたりガウディハウスを隅々まで拝見したが、古いものを巧みに残しながらも老朽化した水回りなどの部位などは現代風にアレンジされ、見事に新しい息吹が吹き込まれたという印象を受けた。

10年以上の年月を費やして、古き良き時代の日本の住宅風情を残しながら再生されたガウディハウスは、尾道というまちの歴史と景観を守りたいという人々の思いがぎゅっと詰まった、地元の宝の様にも思える建築だった。

撮影協力:NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト

関連WEBサイト

尾道ガウディハウス
尾道空家再生プロジェクト
日本遺産尾道市



今回行った場所

尾道ガウディハウス

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