永田町で国家議事堂の見学ツアーを楽しんだその帰り、紀尾井町まで足を伸ばして旧宮家の御屋敷レストランに向かった。
関西にも 旧ジェームス邸 や 旧竹内栖鳳邸、旧西尾邸 や 蘇州園 など、時の実業家や日本画壇の大家などが、贅の限りを尽くして建てた私邸をレストランに転用した建築はいくつかあるが、かつての「華族」が過ごした御屋敷のレストランというのは、東京ならではのものだと感じる。
旧李王家東京邸・赤坂プリンスクラシックハウス “ La Maison Kioi” 。 往時の面影を色濃く残した店内の設えがとても素晴らしかったので、食事前に撮影させて頂いた写真と合わせて綴っておきたい。
旧李王家東京邸・赤坂プリンスクラシックハウス
外観は急勾配の屋根や中央に立つ塔など中世風の雰囲気が漂う。 車寄せの中央部がわずかに尖ったアーチや、部分的に取り入れられたハーフティンバーのディティールなどから、チューダー様式を基調としたデザインであることがわかる。
イギリスをお手本とした、チューダー様式は皇族や華族邸宅の定番スタイルだった様だ。
この建築の設計を担当したのは、皇族の住まいを一手に引き受けていた宮内省のエリート建築集団「内匠寮」だ。東伏見官邸、秩父官邸など多くの皇族邸を手掛けた 北村耕造 と、旧朝香宮邸(現庭園美術館)を指揮した 権藤要吉、両名の仕事として知られている。
重厚で優美な空間を愉しむ
もともとこの辺りは、江戸時代には紀伊徳川家の大名屋敷、明治時代には北白川宮家の皇族宮廷があった由緒ある場所。その後の韓国併合時に設立された李王家の東京邸として、昭和5年に建てられたのが現存する建物だ。
La Maison Kioi
戦後にこの地を継承したプリンスホテルが受け継ぎ、現在は東京ガーデンテラス紀尾井町の一部「赤坂プリンス クラシックハウス」の名称で、ブライダルレストランとしてリノベーションされているのだが、往時を彷彿させる佇まいが とても巧みに“保存・再生”されている。
建築を再生するにあたって、創建当時の資料などを基に李王家が住んだ当時の状態に復原したという。
華やかさを感じる絨毯や布張りの椅子、照明器具などは全てリニューアル時に設置されたもの。暖炉やクラシックスタイルの壁面装飾、格天井など、創建当時のものと思しき設えとの融合が見事だ。
玄関ホール内部を飾る重厚な柱や、白亜の壁で仕上げられたかつての応接スペースに設えたイオニア式柱頭をもつ角柱など、皇族の邸宅であった時代の名残りを感じさせる優美な雰囲気を醸し出している。
La Maison Kioi
重厚な装飾の階段と客間に配された幾何学模様のステンドグラスから優しい光が溢れる。 泰山タイルで設えた中庭の壁泉など、見どころが満載の建築で、食事を愉しむ前に、随分と満喫させて頂いた。
東京の中心に佇むこの空間が非日常のひとときへと誘ってくれる様であった。
今回行った場所
旧李王家東京邸・赤坂プリンスクラシックハウス
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