熊野本宮大社
紅葉前の初秋、熊野古道 を歩るき、熊野詣 をしてきた。
インバウンドで賑わう観光地と同じく、たくさんの外国人もせっせと歩いていた。
世界中で 「道」 というキーワードで世界遺産になっているのは、スペインの “サンチャゴ巡礼路” というのもと、熊野古道を含む “紀伊山地の霊場と参詣道” の2つだけなのだとか。
熊野古道「中辺路」
という訳で、どうやら日本で最も多くの外国人が歩いているトレッキングコースは “熊野古道” のようですね。
What’s “熊野古道” & “熊野三山” ?
案外、熊野古道 って何の為の道なの?って、ざっくりしか知らない人も多いんじゃないでしょうか?
まず、熊野 とは和歌山県南部と三重県南部あたりの「紀伊半島の南部一帯エリア」の事を指し、大和時代の “熊野国” と大枠一致します。
この辺りは、深い山々に囲まれていて日本の神秘的なイメージを連想させる抜群のロケーション。 古より紀伊山地には、万物の創造主である神々が住まう処と信じられ、人々はその自然を畏敬し、崇め、信仰しました。
熊野三山 とは熊野エリアに点在する “熊野本宮大社” “熊野速玉大社” “熊野那智大社” という3つの神社の総称の事を言います。
そして熊野古道とは、古代から信仰の対象とされてきた、この熊野三山を巡礼するために開かれた “参詣道の総称” のことを指します。
熊野古道「中辺路」
熊野本宮に神がまつられたのは、今から約2,000年前で、熊野詣が特に盛んだったのは、平安時代から鎌倉時代にかけてと言われています。その距離は京都の都からなんと300km。
人々は情熱的な信仰心と共に、山中の険しい道を幾日も費やし、熊野の地をめざしたといいます。
「熊野へ行くと不思議な力を授かる!」として庶民の間にも熊野詣がブームになり、江戸時代に多くの民衆が詰めかけたことから、その景観は「蟻の熊野詣」とも言われたほど。
LIGHT!熊野古道 おすすめコース
昔の人が、何日もかけて聖地を目指した熊野詣ですが、現代人の我々は、気軽に信仰深き古の道を歩く事が出来ます。
しかし、一口に熊野古道と言ってもコースが幾つもあるんですよね ・・・
今回は僕の様なトレッキング初心者かつ、運動不足感満載の中年オヤジでも、くそ重たい一眼レフカメラとレンズを数本バッグに入れて、熊野古道の名所を撮影しながら熊野三山を参る、おすすめの “LIGHT!熊野古道コース” を巡ります。
どうぞ、最後までお付き合い下さい!
DAY1 発心門王子から熊野本宮大社、大斎原へ!
一日目は熊野古道の中でも最もメジャーな 中辺路 ルートの初心者向けお手軽コース。 山中の古き参詣道のスピリチュアルな雰囲気を味わえながらも、比較的なだらかで歩きやすいコースです。
距離は約7kmほどですが、休憩時間などを入れると、所用時間は3時間ぐらいが目安となります。
発心門王子からスタート! 王子とは!?
スタートは 発心門王子 という地点からになりますが、ここまではバスで移動します。 車の場合はゴール地点の 「熊野本宮大社」 に車を停めてから、同じくバスを利用して発心門王子まで向かいます。
ルート的には 発心門王子 → 水呑王子 → 伏拝王子 → 祓戸王子 → 熊野本宮大社 と、途中に三つの王子を経由します。 で、 王子 とは何ぞや? という事なのですが・・
発心門王子
王子とは、熊野の神様の御子神が祀られている “王子社” の事で、熊野古道沿いには、九十九王子 と言われる程、たくさんの王子社があり、古の参詣者は王子社を巡拝しながら長く険しい旅を続けたと言われています。
千年変わらない祈りの道を撮る!
発心門王子から熊野本宮大社までの道のりは、集落と樹木に囲まれた石畳など古道らしい雰囲気の道を交互に歩くコースで、ゆったりと景観を楽しみながら歩くことができます。
発心門王子をスタートし、昔なつかしい日本の田舎集落の風景を見つつ、「水呑王子」を過ぎると、鬱蒼とした杉木立の中を歩く古道らしい地道に入っていきます。
うねうねと木の根が這う小道や、苔むした石、木立の間から漏れる日の光も幻想的で心地いい。
被写体として映えるものがそこらじゅうにある訳ではありませんが、ちょっとした変化や懐かしい風景をスナップで撮影していくと面白いと思います。 緩やかなコースとはいえ、登りも下りもあるので、カメラは落とさない様に気をつけましょうね。
熊野古道「中辺路」
伏拝の静かな集落を歩いて行くときれいに手入れされた茶畑が見え、しばらくすると「伏拝王子」に着きます。
伏拝王子からは、爽やかな緑のトンネルのゆるやかな自然道が続き、三軒茶屋跡、関所跡を通り、さらに緩やかな山道を下ると本宮神社手前の「祓戸王子」、そして間もなくゴールの本宮大社へと続きます。
熊野本宮大社
熊野本宮大社は、日本全国に3,000社近くある熊野神社の総本社。 熊野三山信仰の中心地となる社です。
一の鳥居を潜り、158段の石段を登って境内へと向かう。 石段の両脇には何本もの幟がなびき、立ち並ぶ杉木立と相まって厳粛な雰囲気がした。
石段を登ると神門があって、奥に檜皮葺の古式ゆかしい雰囲気を漂わせた社殿が並び、歴史の深さを感じられますが、ここに社が遷座されたのは1891年(明治24年)の事。 先の水害で元あった場所から高台である現在地に移築されたんですね。
大斎原の大鳥居
古代本宮の地に神が降臨したと伝えられているのは、紀元前33年にまで遡るのですが、もとの社地は現在、大鳥居が立つ十津川下流の 大斎原という中洲にありました。大鳥居の背後にあるこんもりとした森が大斎原です。
江戸時代までは中洲への橋がかけられる事はなく、参拝に訪れた人々は歩いて川を渡り、着物の裾を濡らし、冷たい水で身を清めてから詣でるのがしきたりだったといいます。
古の熊野本宮大社
しかし、明治22年に起こった大水害が本宮大社の社殿を呑み込み、社殿の多くが流された為、なんとか水害を免れた四社を現在地に遷座したという事です。
大斎原は熊野本宮大社から徒歩5分と近く、パワースポットとしても有名な場所。 威風堂々とした35mの大鳥居と、古の聖地の風景はカメラに収めておきたい。
熊野本宮温泉郷
熊野本宮大社から車で10分ぐらいの熊野本宮温泉郷は、開湯1,800年と言われる日本最古の温泉 “湯の峰温泉” などがある温泉郷。 今も昔ながらの温泉情緒を残し、湯の町の風情を感じる事が出来ます。
渡瀬温泉 出典:wikipedia
古の人たちも、長く厳しい祈りの旅で疲れた身体を、大自然に囲まれた温泉郷の湯に浸かり癒したといいます。
DAY2 大門坂を上り那智大滝のスピリチュアルに触れる!
熊野本宮大社の参拝を済ませたあと、熊野川を船で下り、熊野三山の残りの二社、熊野速玉大社、熊野那智大社へと詣でるのが中世の巡礼ルートだったという。 二日目は同じルートを辿ります。
熊野速玉大社
熊野速玉大社は新宮市の町中に鎮座する熊野三山のひとつ。 神域の境界線を示す太いしめ縄が設けられた神門を潜り拝殿へ向かう。
均整がとれたシンメトリーの拝殿からは神々しい雰囲気が漂い、境内を囲む緑の木々との調和が厳かな世界観をつくっています。 紀元前の景行天皇の時代に、現在地に初めて社を建て祀られたことから、 “新宮” の地名の由来となっているという。
大門坂
さて、2日目のメインルートは、石畳が美しい “大門坂” を上り、熊野那智大社を参詣して那智の滝へ向かうコース。 距離は約2.7km程ですが、参詣や散策を含むと約2時間のコースです。
なかでも、約600mの大門坂は「熊野古道」で画像検索して出てくる写真のほとんどがココ、っていうぐらい “熊野古道を代表する写真映えスポット” です。
熊野古道「大門坂」
その昔、坂の到着地点に大門があったことが名前に由来している大門坂。 樹齢数百年の深い杉の巨木群の中を、苔むす石畳が延々と連なり、何とも言えない神秘的な雰囲気が漂います。黒い砂岩で積まれた石段は江戸時代に整備されたものらしい。
僕が大門坂を上ったのは平日の昼間だったのですが、思ったより人は少なかったです。 ここは日中でも木立に覆われているので薄暗いのですが、ロケーション的には霧のかかった早朝や小雨の日などに行けば、より良い雰囲気の写真が撮れるんじゃないでしょうか。
熊野那智大社
熊野三山、最後のひとつ 熊野那智大社 は、仏教における観音信仰の聖地でもありました。古くはインドの有名な僧侶も那智の滝で修行を積んだという。
青岸渡寺という古刹が隣接して建っていて、明治時代までの神仏習合の習わしが深い場所だった事が想像出来る。境内には、熊野の神様のお使いである、三本足の 八咫烏もいらっしゃる。
那智大滝
最後は聖地熊野のシンボルとも言える “那智大滝” 。
熊野那智大社の別宮「飛瀧神社」として、滝そのものが御神体として祀られています。高さと水量が日本一といわれる大瀑布は、かなりの圧巻。人々が壮大な滝の姿に魅せられ神が宿ると信じてきたのも分かる様な気がする。
那智大滝は近くまで寄って写真を撮る事が出来ます。 今回はたまたま人も少なかったので、三脚立てさせて貰ってNDフィルター付けて撮影してみました。
まとめ
昔の人たちが何ヶ月もかけてやって来た聖地 熊野。 時の天皇や貴族のなかには年に一回のペースで詣でた人もいるのだとか。
京阪神から近い様で意外に遠い印象があるので、関西人でも行った事のある人は少ないかも知れませんが、車なら大阪から奈良を経由して、3時間ちょいで熊野本宮大社まで到着します。
そんなに気負わずに、LIGHTな気分でカメラ持って週末に出掛けてみるのもありだと思います。
では、また!
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