琵琶湖は言わずと知れた日本最大の湖であると同時に、世界で4番目に古い古代湖でもあります。
琵琶湖の北部、長浜港から約6km沖合いに浮かぶ “竹生島” は古来より 「神の住む島」 として信仰され、のちに仏教信仰が融合した神仏習合の聖地となり、近年はパワースポットとしても良く知られる様になりました。
今回は湖上に浮かぶ霊島の観光スポットと合わせて、琵琶湖に存在する無人島を巡ってみたいと思います。
神宿り天女降り立つ湖上の霊島
周囲約2kmの小さな島は常緑樹に覆われ、四季折々の景観美は “琵琶湖八景” にも数えられる竹生島。 島の湖底には、多数の古代土器や縄文期から中世にかけての遺跡が残るなど、歴史に思いを馳せ、スピリチュアルに触れるにはこのうえない場所なのです。
僕が長浜港から竹生島クルーズ船に乗って島に訪れた日は朝から曇天で雨が降ったりやんだりといった天気。 しかし、ギラギラとした太陽の光が燦々と島に降り注ぐといったロケーションよりも、むしろ湖上に霞が立ち込め、島に生える鬱蒼とした草木から雨水の雫がぽとぽとと滴り落ちているといった様な、観光にはやや不向きとも思われる日和の方が、この島の崇高な雰囲気には似合っている様にも思えた。
竹生島は遠目には綿帽子を湖面に浮かべた様な可愛らしい島影をしていますが、長浜港からおよそ30分、島に近ずくにつれてその印象が荒々しい様相へと変ってゆきます。
島全体が花崗岩の一枚岩からなっていて、周囲は切り立った柱状の岩石で囲まれている。島の南側のほとんどは木立に覆われていて、その隙間から木造の寺社が顔を覗かせるといった神秘的な佇まいを見せています。
竹生島は神仏が一体となった思想のなかで発展してきた歴史のある島です。この島に渡って訪ねる場所は大きくは二つの寺社のみ。 ちなみに竹生島の寺社関係者や、船着き場付近に幾つかある売店の店員さんなども島外から通っていて、夜間はまさしく “神のみが住む” 無人島となります。
宝厳寺
船着場からしばらく歩を進め、厳金山の額がかかる石の大鳥居をくぐると宝厳寺の寺域に入ります。さらに167段あるという石階段を登り切ったところに、日本三大弁財天のひとつでもある “宝厳寺” が見えてくる。 平安時代以降、長らく竹生島弁財天社として信仰を集めていたが、明治時代初期の神仏分離により宝厳寺に属したという。
竹生島の主が “弁財天” である意味は極めて大きい様で、もしこの島に弁財天がいなければ 「琵琶湖」 という名前もなかったかもしれないとも言われています。
琵琶湖の名前が文献に現れだすのは500年ほど前の事。 楽器の琵琶に形が似ている事から湖名が付けられたというのが通説ですが、湖の周囲に琵琶湖を一望できる場所などなく、比叡山をはじめとするどの山からもその全貌は見えない。そこで大きな意味を持つのが “手に琵琶を持つ弁財天” の存在だという説があります。 何となくこっちの方がしっくりくる様にも思いますよね。
宝厳寺の創建は奈良時代と実に古く、僧の “行基” によって開かれたと言われています。生涯に近畿地方を中心に600もの寺院を開基したという行基上人。関西には行基ゆかりの場所がほんとに多いですよね。また “西国三十三ヶ所観音霊場” の三十番札所としても知られている宝厳寺。僕が行った日にも本堂には巡礼中の多くの方がお見えになられていました。
舟廊下を通って
千手観世音菩薩を納めた宝厳寺観音堂から渡廊を通って都久夫須神社へと向かいます。 “舟廊下” と呼ばれるこの建造物は、豊臣秀吉が朝鮮出兵のおりに御座船として作られた日本丸の船櫓を利用して作られたところからその名がついています。
都久夫須麻神社
湖水を支配する “浅井比売命” と 弁財天の “市杵島姫命” 、蛇神・龍神の化身 “宇賀福神” と “龍神”。 四柱の神様を御祀りしているという都久夫須麻神社は 竹生島神社 とも言われています。本殿は伏見城の建物が神殿として寄進されたものとか。
僕がこの島で一番印象に残り、竹生島と琵琶湖の良い関係が感じられたのは、拝殿が琵琶湖に面し鳥居が湖面に突き出た龍神拝所。 船から見た印象とは違い、穏やかな湖面と一体となった美しさがありました。
琵琶湖に浮かぶ、もう2つの無人島
琵琶湖には大小4つの島があります。有名なのは一番大きな “沖島” で、700年前から人が住んでいる日本で唯一の淡水湖にある緑豊かな有人島。 200人を超える人々がこの島で生活をしています。
残りの2つは竹生島と同じく、無人島になります。
多景島
遠くから見た島の形が軍艦の要にも見える 多景島は、見る角度によって多彩な顔を見せる事(景色が多い島)がその名前に由来しています。
周囲600m程の小さな島ですが、1655年に創建された日蓮宗の見搭寺が抜群の存在感を示しています。
沖の白石
琵琶湖のほぼ中心に、突如としてそびえる4つの岩 “沖の白石” 。
湖面から突き出た大小4つの岩は、一番高い所で14m近くあるのですが、この辺りの水深が約80mある事から岩の全長は100m近くと推定されます。なんとも神秘的な雰囲気。
あとがき
竹生島は日本で信仰の島、霊島と言われている数少ない島のひとつ。湖上の島で平安時代から霊島としての歴史を持つのは竹生島ぐらいじゃないでしょうか。 彦根や長浜も歴史のあるまちですが、ちょっと船に乗ってスピリチュアルに触れる湖北の旅もいいものです。
“翼果楼” の鯖そうめん
竹生島へと渡るクルーズ船があるのは湖北の長浜港。やっぱり〆は長浜名物のおかんの味を頂くことに。
鯖そうめんは湖北に伝わる伝統料理で、見た目は名前のまんま、鯖の煮汁で味付けされた素麺のうえに大ぶりな焼き鯖がドカッと乗ったという代物。
もともとは地元の農繁期に食べられることが多かった料理で、田植えなどで忙しくなる五月に農家へ嫁いだ娘を持つ親が嫁ぎ先へ焼き鯖を届ける「五月見舞い」というならわしがあったのだとか。田植えの時期には米を切らしている農家も多く、保存食として置いてあったそうめんを使って、さっと焼き鯖とあわせて食べたのが由来ともいわれています。
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