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「幕末・明治の彩色写真技術」と「現代最先端の自動着色技術」が凄すぎるのでちょっと語らせて

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THE LAST SAMURAI


出典:The Metropolitan Museum of Art.

腰に下げた太刀に手を添え、鋭い眼光でこちらを見据える一人の侍。今からおよそ150年前、激動の幕末期に撮られたこの写真は フェリーチェ・ベアト というイギリス人カメラマンによって撮影されました。

「ざんぎり頭を叩いてみれば文明開化の音がする」

" ヘイみんな!ちょんまげ頭を切っちゃって文明開化の波に乗ろうぜ! " っていう意味のこの時代の文句ですが、幕末期から明治にかけて、日本伝統の浮世絵に変わって西洋伝来の写真が世に現れたのは、まさに “視覚の文明開化” 。当時の人からするとダイヤル式電話から一気にスマホに変わるぐらいの衝撃があったのではないでしょうか⁉︎

フェリーチェ・ベアトは幕末から明治にかけて、横浜を拠点に日本各地で風景や風俗を撮影したカメラマン。ベアトは当時東アジアで数多くの記録写真を撮影しており、日本ではほとんどの西洋人が立ち入りを許されなかったような場所での撮影も許可されました。


出典:wikipedia

上の写真はベアトが戊辰戦争中の薩摩藩士を撮ったとされるもの。 当時の写真は当然「白黒」ですよね。しかしなぜかカラーが混じっておりますね? これは撮影後に手作業で丁寧に色づけしている 彩色写真 と言われるものです。

開国と共に日本にやってきた旅客向けの土産物として人気があった「彩色写真」は日本最大の開港地となった横浜を中心に発達したことから 横浜写真 とも言われています。当時、写真の普及によって仕事が激減してしまった浮世絵師や日本画家たちが、写真家に雇われて白黒写真に彩色してたりもしていたそうです。

Kusakabe Kimbei, Post Runner

出典:獺祭書屋

この飛脚をモデルにした彩色写真なんか色使いがめちゃ鮮やかですよね。
このまま、某宅急便会社の宣材写真として使えそう。

明治時代 彩色写真の巨匠たち

日下部 金兵衛

当時の彩色写真界でこの人の右に出る人はいないとまで言われた “日下部金兵衛” 。顧客に外国人が多かったため、苗字より発音のしやすい「KIMBEI」の名前を用いることが多かったそうです。

横浜のフェリーチェ・ベアトのスタジオで写真の彩色技師を勤めた後に独立し、写真スタジオ「金幣写真」を開設。金兵衛が撮影した被写体は、その時代の風景はもちろん、市民の日常生活や職業人物の姿、俳優や芸者など多岐にわたり、欧米とは全く異なる日本人の風俗・習慣を写した金兵衛の写真は特に外国人に絶大な人気がありました。


Man with the rain coat


Vegetables


Samourais in armour 


Harakiri ceremony 


girls holding a rope.


dancing women 

玉村 康三郎

鎖国が修了し開国が始まったばかりのころ、日本への観光客を増やすために、ボストンの出版社からの依頼もあり、日本の名所や風俗の彩色写真の生産を大量に行った写真家 “玉村 康三郎” 。撮りに撮った写真のその数なんと100万枚!?

欧米諸国の人々は、鎖国によって情報がなかった日本の情景や文化を、彼の写真によって垣間見ることができました。


出典:Smithsonian Institution


出典:Smithsonian Institution


出典:Smithsonian Institution


出典i.dailymail.co.uk

鈴木 真一

現代に残された写真が極めてクリアで技術が高いことで有名なカメラマン。ボケの表現が美しいですね。この “鈴木 真一” は明治期に女性に写真術を教える唯一の教育機関だった「女子写真伝習所」という学校を設立した人物です。

また、長年にわたる研究によって、陶磁器に写真を焼き付ける技術を開発しました。


出典:The Metropolitan Museum of Art.


出典:The Metropolitan Museum of Art.


出典:The Metropolitan Museum of Art

小川 一真

“小川 一真” は埼玉県出身の明治大正期に活躍した写真家。さまざまな名所や風俗、文化財をはじめ日本の歴史を伝える多くの被写体を捉えてきた写真家です。日本における写真界の発展に尽力し、多大な業績を残した明治日本写真界の牽引者のひとり。

小川一真は、旧千円札紙幣に描かれた夏目漱石の写真を撮影したことでも有名です。

 

実は際物だった? 彩色写真

現代の僕たちが見ると非常に新鮮で、当時の日本の面影をリアルに想像させてくれる彩色写真ですが、実はほんのつい最近まで日本では彩色写真自体の評価があまりされていなかった様です。

演出された写真 や 土産物中心 という作品の性格もあり、また、外国人向けの商品が多く日本に完品で残っているものが極端に少なかったというのも原因のひとつ。


坂本龍馬 肖像 (上野彦馬 撮影)

彩色写真は日本の写真史においてもキワモノとしてをあまり評価してこなかった傾向があります。幕末・明治期の写真と言えば、日本写真文化の開祖 “下岡蓮杖” や、坂本龍馬の写真で有名な “上野彦馬” のそれが代表的で、その陰で長い間、日の目を見ることのなかった彩色写真。

しかし昭和の後半に横浜アルバムを含めて古写真が欧米から逆輸入され、100年以上たった現在、幕末・明治期の彩色写真の魅力や技術が再評価されています。

そして現代、写真彩色技術はコンピューター技術によって更なる進化を遂げました。

AI(人口知能)を使った写真自動着色技術が凄い!

幕末・明治期の写真家や彩色技師が莫大な時間を使って仕上げたであろう彩色写真の時代から、およそ一世紀半。なんと、クリック数回、指一本であっという間に、 白黒写真に自然な色付けを自動でする! なんていう技術が出来ているのをご存じでしょうか!?

しかも、 誰でも気軽にインターネットを使ってチャチャっと色付け変換できる って代物です。

さっそく “線路を歩くグラマーな女性” の白黒写真を使って、チャチャっと変換。

おおー!かなりリアルなカラー着色!!
いったいどうやって色の認識をしているのでしょう?

早稲田大学理工学術院の石川博教授、飯塚里志研究院助教、シモセラ・エドガー研究院助教らの研究グループは、ディープラーニングと呼ばれる人工知能技術を応用し、白黒写真を自然に彩色する「ディープネットワークを用いた大域特徴と局所特徴の学習による色付け」の手法を確立しました。

(中略)

本手法では、大量の白黒・カラー画像の組から色付けの手掛かりとなる特徴をディープラーニング技術により学習し、その特徴を使って与えられた白黒画像をカラー画像に変換します。特に本研究で開発した新しい手法として、画像全体から抽出される大域特徴と、より小さな領域から算出される局所特徴とを結びつけて利用します。

大域特徴からは、屋外か屋内か、また昼か夜か等の写真全体についての情報を得ることができ、また局所特徴からは、例えば砂か葉か水か等の物体の持つ質感により、その領域をどのように色付けするのが最も適当かという推測をすることができます。これらの組み合わせが、夕暮れの空や人の肌等の、より状況にあった自然な色付けを、人による介入を必要とせずに可能にしました。
引用:早稲田大学ホームページ 

なるほど。

これの仕組みとか構造は、上記引用元のホームページで詳しく解説されていますが、要は とにかくAIってすごいよね ! ってこと。せっかくなので色んなシーンの白黒写真を何枚か使って、AI先生の彩色技術を検証してみました。

チンパンジーの手

トラくん

野花

空と電柱

廃墟

草原と女性

池のほとり

Happy Celebrate!

いかがでしょうか。
被写体によって若干の得手不得手があるようですが、かなり自然な着色ではないでしょうか?細かい色の識別を白と黒だけの情報から引っ張り出しているのには驚きです!

白黒画像の自動着色オンラインサイト

こちらにオンラインで白黒画像をカラー化するサイトのリンクを貼っておきますので、皆さんも是非一度「ワンクリック着色」を体験してみて下さい。

PicWish

白黒写真をカラー化できる PicWish はAI技術を活用し、大量のデータに基づいて写真に適切な色をつけます。白黒写真をアップロードするだけで自動的にカラー化される完全無料サイト、アプリ版がありアンドロイドやアイフォンでも利用できます。

DataChef

DataChef は完全無料で商用利用が可能、AIが白黒写真をカラー化するサイトです。白黒写真をカラー化すると写真にざらざらとした跡が残るケースがありますが、DataChefは画像のノイズを除去するサイトも提供しています。

あとがき

このようなAIとかIoT(Internet of Things)とかの技術って日進月歩なので、新しい仰天の技術がこれからもどんどん凄いスピートで出てくるんでしょうねー。

ただ、160年前に「白と黒」の世界に鮮やかな色付けを行い、その類まれなる職人技で世の人々の心をワクワクさせた日本人たちの心意気とか想いはずっと忘れたくないですね。

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