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スケッチ作家「安田泰幸」さんが描く近代建築の世界

投稿日:

S.L
安田泰幸さんのスケッチが好き !

大阪市中央公会堂

出典 : 安田泰幸「水彩スケッチギャラリー」

建築の仕事に携わる僕の趣味は “建築写真” を撮る事なのですが、とりわけ明治期から昭和初期の間に建てられた “近代建築” と言われるジャンルのモダン建築がとても好き。

明治維新以降、日本の近代化が進む中で木造による西洋風建物が建てられる様になり、やがて火に強い煉瓦造りの建物が主流になってゆくも、1923年(大正12年)の関東大震災以降は、コンクリート躯体に洋風モダンな意匠を設えたビルヂングがたくさん建てられてゆく。

関西には一世紀近く前に建てられた煉瓦建築や、趣ある装飾が施されたレトロ建築が意外に多く残っています。

“安田泰幸” さんは、歴史的建造物や街並みなどをモチーフとした作品を中心に、30年以上も水彩スケッチを描き続けているという作家さん。優しく柔らかいタッチの作風になんとも言えない魅力があります。

神戸 旧居留地

心斎橋 アメリカ村

出典 : 安田泰幸「水彩スケッチギャラリー」

旅先や街角などで、気になったモチーフをポストカードに描きとめるというスタイルで、これまでに3,000以上もの作品を描かれているそうです。今回は僕が好きな安田泰幸さんの作品をご紹介させて頂きたいと思います。

大阪市出身という安田先生の作品には関西の建築物をモチーフにしたものも多く、安田先生が描く穏やかなパースペクティブを持った近代建築のスケッチに触発されて、この建築を写真に収めたいっ!と撮影に出掛ける事もしばしば。

でも、なかなか安田先生のスケッチ作品より魅力的な写真って撮れないんですよねぇ…



安田泰幸さんが描く “京阪神” の近代建築

大阪

大正末期から昭和初期、東京を超えて日本一の商都「大大阪」と呼ばれた時代に建てられた大阪市内の近代建築たち。大阪大空襲を乗り越えたモダン建築が現在も尚、往時の姿形を残しながらオフィス街の高層ビルやタワーマンションと共存しています。

三休橋筋 浪花教会

芝川ビル 大阪伏見町

大丸心斎橋店 大阪

出典 : 安田泰幸「水彩スケッチギャラリー」

京都

1,000年の歴史と伝統が息づき、寺社仏閣をはじめ京町家など日本古来の建築を数多く有する京都ですが、明治・大正・昭和初期と時代の移り変わりとともに近代化されたレトロ建築も京都市内には数多く存在します。

京都府庁旧本館

文椿ビルヂング 京都室町通

京都国立博物館 正門

出典 : 安田泰幸「水彩スケッチギャラリー」

神戸

明治元年の開港以降、いち早く西洋文化が根付き、港湾都市として発展を遂げた神戸。150年経つ現在も、戦災・震災を乗り越えた異人館や、旧居留地に建てられた近代建築たちが、神戸らしい街並み・景観形成に重要な役割を果たしています。

旧ハンター邸

神戸海岸通 商船三井ビル

神戸海岸ビルヂング

出典 : 安田泰幸「水彩スケッチギャラリー」

安田泰幸さんの描くもの

想像力がつくる物語 …

私が普段スケッチしているものは、街角の風景。具体的には街並み・建物・乗り物・道具・食べ物…などが圧倒的に多い。以前は意識していなかったが、できあがった作品が増えるにつれ、自分はこういうものに興味があるんだなと、だんだん自覚するようになってききた。

これら私が描く対象・モチーフは長い歴史の中で、人びとがつくり、築いてきたものである。つくるという言葉には「作る」「造る」「創る」という文字をあてる。小さな身近なものから、壮大なものまで、また具体的なものから抽象的なものまで、人びとがつくってきたもの、築いてきたものは多岐にわたり多様である。

何かものでもことでもつくる場合、こうしたら作れるのではないかと想像するところから始まる。工夫や改良もこうしたらよりよくなりそうだと想像することから始まる。つまり「つくる」ためにはイマジネーションが必要だといえる。イマジネーションを膨らませ、それを実現するために試行錯誤を繰り返すことによって新しいものが創造される。

そしてそこには「なぜ」つくったのか、「どのようにして」つくったのか、つくって「どうなった」のか、さまざまな物語が生まれる。そうしたものの積み重ねが「文化」になっていくのではないだろうか。

見知らぬ街角を描くとき、歴史のにじむ建物を描くとき、人びとが使ってきた乗り物や道具を描くとき、これは誰が?なぜ?どのようにして?つくったのか。どのように使われ、どのように人びとの人生に寄り添ってきたのかを想像しながら描くのが楽しい。

街並みも建物も乗り物も食べ物も、それぞれに良きにつけ悪しきにつけ、それらがつくられた経緯や物語が違い個性的である。

出典:第一学習社
「安田泰幸」人は何をつくってきたかを描く

僕が思うスケッチの魅力とは?

建築写真に限ったことではなく、雑誌や写真集などに載ってる写真を見てから実際の現地に行った時、“実物” より “写真” の方が魅力的だったね? なんて感じた経験ありませんか?

露出とかレンズとか照明とか、被写体をより魅力的に見せるための技術はあると思うのですが、写真とは、何を “主題” にして “何を見せたい” のか? を明確にして、そこから不要なものを四角い枠から外していくっていう「引き算」が大事 ! なんて良く言われます。

主題である被写体をより良く魅せる為に、必要じゃないものを差っ引いて “切り取る” から、余計な情報まで拾ってくる “肉眼” より、被写体が際立って魅力的に見えるのは、ある意味、当然なのかも分かりません。

スケッチって、それの究極系だと思うんですよね。 描き手がモチーフを見て感じた一瞬を切り取り、その刹那感によって、時には優しく、時には力強く描かれた線からは、不要な情報を排除した被写体の魅力が凝縮される。

安田泰幸さんの作品から、そんな一瞬一瞬の物語が伝わってくる様な気がします。

今回の記事では安田泰幸さんのホームページから作品を引用転載させて頂きましたが、紹介させて頂いた作品以外にもとても魅力的なスケッチが同ページに綴られています。

安田泰幸さんが描くスケッチを眺め、その物語を感じて、大好きな近代建築や歴史ある街並みをこれからも巡ってゆきたい。

 安田泰幸さんのホームページ

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