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神戸クラシカル “相楽園” の異人館「旧ハッサム住宅」を訪ねて

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S.L
旧ハッサム邸へ !

旧ハッサム邸「2階居室」

神戸という街は、ごちゃごちゃした繁華街が三宮駅や元町駅の駅前周辺といった、ごく狭いエリアに密集しているのがとても良い。

賑々しく人の溢れかえる駅前界隈から海側にほんの少し歩くだけで、旧居留地といったどこか大人っぽくて異国情緒が香る静かな景観に一変する。

大阪とも京都ともまた違う、山と海に挟まれた小さなエリアにいくつもの顔を持つという特有のロケーションが、神戸という街の魅力のひとつではないだろうか。

南京町の最寄り、元町駅から北西に10分程歩くと、神戸では珍しい日本庭園 “相楽園” の豪壮な大門が見えてくる。 この相楽園も例に漏れず駅前繁華街から少し離れているので、いつ行っても静かな印象があります。ちなみに相楽園は神戸市の都市公園のなかでは唯一の日本庭園になります。

What’s 相楽園 ?

相楽園はもともと江戸時代に摂津国の有馬郡におかれた三田藩の元藩士 “小寺泰次郎” が明治後期に建てた私邸を神戸市が譲り受けたもの。しかし広大な旧小寺邸の敷地内にあった、本邸をはじめとする建造物の殆どが神戸大空襲によって焼失しています。

相楽園「船屋形」

庭園というものにとりわけ明るい方ではないですが、池泉を配した回遊式の庭に季節の草花が彩りを添えて、池のほとりから顔を覗かせる “船屋形” が辺りの景観をキュと引き締めている様に思えた。

春慶塗と黒漆塗を塗り分けた絢爛たる装飾の船屋形は、もともとここに建てられたものではなく、姫路藩の殿様が遊覧船として使っていた「川御座船」の屋形部分だけを切り離して移築したものらしく、これが相楽園の庭園のシンボルマークにもなっています。

江戸時代の将軍や諸大名たちが使用した川御座船、現存するのは相楽園の船屋形が国内で唯一のものだとか。 そして、相楽園のなかでひときわ存在感のある歴史的建造物がもう一つあります。



旧ハッサム住宅

旧ハッサム住宅はインド系英国人貿易商のJ・K ハッサム氏の自邸として、1902年頃(明治35年)北野町異人館街に建てられたもの。1961年(昭和36年)に神戸市によって現在の相楽園内に移築保存されています。

前庭に設置されたガス灯は、神戸開港から数年後の1874年頃(明治7年)に旧居留地の街灯用として建てられていたもので、現存する日本最古級のガス灯との事。 阪神・淡路大震災時に屋根から落下した煙突が前庭に保存展示されています。

南側にベランダが大きく開かれ、幾つもの窓開口を持つ開放的な旧ハッサム住宅の建築様式は、明治期の異人館でよく見られる典型的なコロニアルスタイルの洋館です。

1階 応接室

旧ハッサム住宅の設計者は、明治期に神戸外国人居留地や周辺の雑居地で建築物の設計を数多く手掛けた “アレクサンダー・ネルソン・ハンセル” と推定されています。

この人はコロニアルスタイルの洋館設計を好んだ様で、現存するハンセル設計とされている代表的な異人館には、北野のシュウエケ邸や旧シャープ邸(萌黄の館)、塩屋の旧グッゲンハイム邸や、王子動物園に移築された旧ハンター邸などがありますが、全てコロニアル様式で建てられています。

(左) A.N.ハンセル夫妻 (右) 旧グッゲンハイム邸

イギリス人設計者のハンセルは1888年(明治21年)に神学校の教師として来日した後に建築家として活躍し、日本に数多くの洋風建築を残した人なのですが、そんな生涯が、僕の好きな建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズと同じ気概を感じるんですよね。

延べ床面積100坪の大邸宅、旧ハッサム住宅は一部屋毎の間取りがかなり広めに設計されていて、1階は主に応接室・居間・食堂などのゲストルーム機能を兼ねた部屋で構成されています。

白い漆喰塗りで仕上げられた天壁と、濃茶のオイルステインで仕上げられた床材が上品に調和し、階段室や玄関・ホールには羽目板張りの重厚な腰壁が設えられていました。

2階 居室

2階は主に寝室や子供部屋、浴室などの家族の生活の場としてのプライベートフロアとして構成されていて、インテリアも1階の趣きと比較して、やや軽やかな印象を受けました。

この建物の施主であるハッサム氏についての詳細は不明ですが、明治期から真珠産業が盛んだった神戸には、宝石や真珠を扱う多くのインド系貿易商たちが北野に居を構え活躍していたようです。確かに今でも北野界隈にはインド料理店が多いですよね。

明治時代の異人館の特徴を伝える名建築として評価され、1961年に国の重要文化財に指定された美しい異人館 “旧ハッサム住宅” は春と秋をメインに、それ以外の時期にも不定期ですが一般内部公開を行なっておられます。

古建築ファンなら庭園内の船屋形と合わせて、明治期の代表的な異人館鑑賞を楽しめると思います。

では、また !



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今回行った場所

旧ハッサム住宅 相楽園 公式ホームページ

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