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大阪最古の木造校舎「旧新田小学校」の歴史と建築を訪ねる

投稿日:

Hamzo
ノスタルジックな木造校舎へ!


旧新田小学校

豊中市に現存する 新田しんでん小学校 は1900年(明治33年)に建てられた、築120年余りの大阪最古の木造校舎だ。

旧新田小学校が有る上新田かみしんでん というまちの歴史も実に古く、江戸幕府の直轄地として町が形成されたのは、400年以上前の嘉永年間にまで遡る。江戸初期から近所の山田村の百姓によって行われていた同地の開発が、淀藩領となって一気に進んだといわれている。

EXPO1970’ 大阪万博 に合わせて開発が進められた「千里ニュータウン」の中心部にありながら、歴史のある集落は継承するのが望ましいとの判断によりニュータウン計画外区域と決定されたため、現在も江戸時代さながらの面影を色濃く残している。


大正末期頃の旧新田小学校 運動会

旧村落特有の細い道路を歩いていると、家紋入りの瓦葺き屋根や風格ある門長屋、虫籠窓のある家や段蔵のある家などが今も数多く点在している。上新田から北へと向かう勝尾寺街道は、箕面の勝尾寺への参拝で賑わいを見せていた旧街道だという。



大阪最古の木造校舎

大阪府指定文化財旧新田小学校校舎は、ほぼ東を正面とする南北に細長い建物で、前面に幅約2mの吹放ち廊下が設けられ、正面中央には寺院建築風の玄関が付けられている。

玄関には式台があり、正面には 虹梁こうりょう蟇股かえるまた をそなえ、入母屋の妻の上には「學」の字の鬼瓦が載せられている。玄関を上がった先にある応接間は、当時、4畳半の畳敷の部屋であったらしい。

応接間の奥に教員室があり、東西両翼には左右対称に第一教室・第二教室を配する。北側の庭には物入れと用務員室があり、南側の庭には教員住宅が設けられていたとの事。

生徒数の増加などにより、大正・昭和期に行われた増改築を経て現在の形となった様だが、現存部は概ね往時の原型をよく留めている。

木造の校舎

旧新田小学校校舎 はおよそ50年前(昭和48年)まで学校として使用されていたとの事だが、教室の中に一歩足を踏み入れると、ついさっきまで子供たちが駆け回っていたかの様なノスタルジックな世界観に包まれている。

私自身は木造の校舎にお世話になった世代では無いが、“木造校舎” というフレーズだけで、どこか懐かしさが満ちてくる。

近代国家を目指して西洋の制度や文化を取り入れた明治期初頭、当時の大工棟梁たちが見よう見まねで造った「擬洋風」スタイルから、明治末期〜戦前昭和の実用性を重んじた「純和風」スタイル、さらには戦後の「木造モダニズム」スタイルの小学校まで…

ひとくちに木造校舎といっても時代によって様々あるのだが、いずれも同じ懐かしさを生むのは、やはり木という材質の持つ温かさのおかげなのだろう。

日本の校舎は、昭和40年代から耐震耐火の観点からその多くが鉄筋コンクリート造に置き替えられた。しかし、木造回帰が進む近年、再び木造校舎に建て替えたり、内装だけでも木質に配慮する建築に重きを置く傾向が見られるようになってきた。

これは「木の温もり」が児童を育む環境として見直されてきたことの証である様に思う。

足踏みオルガンのある教室

旧新田小学校には、足踏みオルガンや足踏みミシン、未だ現役で音を奏でる蓄音機、戦前戦中に使用されていた教科書などが多く展示されている。昔、この校舎に通っていたという高齢の方々が、それらを懐古するように眺めていたのが印象的だった。

あの、空気が洩れる足踏みオルガンの音色はどこか懐かしさを覚える。アコーディオンやバンドネオンの音色が郷愁をそそるのと同じことなのだろうか。

小学唱歌には足踏みオルガンの喘ぐような、キイキイ音がする伴奏がよく似合うと思う。

よく小学校の校庭で、子どもたちに囲まれてオルガンを弾いている、というのどかな光景を映画の1シーンで見るが、あれが小学校の理想の風景なのだろう。明治・大正・昭和の世代と繋がる木造校舎にとって、きっと足踏みオルガンは欠かせないものなのだ。



ガリ版の学級新聞

かつての教員室には「ガリ版印刷機」が置かれていた。パソコンやコピー機が当然のように使われている今では、「ガリ版」という言葉自体がもう死語かもしれない。ガリ版とはすなわち、謄写版印刷のことである。

ロウをひいた原紙を、平らな細かいヤスリ板の上にのせて、そこに先の尖った鉄筆でガリッガリッと文字を書いていく。このヤスリ板に鉄筆で文字を書くときにガリガリ音がするのでこれを「ガリ切り」、そして謄写版印刷のことを「ガリ版」と呼んでいた。

ロウ紙の削れた文字が、上からインクをつけたローラーで刷ると、紙にインクがしみて一枚一枚印刷ができるという代物だ。

学級新聞や、小テストにしおり、給食の献立表、なにもかもがこのガリ版印刷で刷られていた。そしてこのガリ版の印刷用紙はワラ半紙と決まっていたが、現在はこのワラ半紙も需要の低下により、手に入りにくい貴重なものになっているのだとか。

消しゴムをかけると黒く汚れて描き直すのに苦労した小テスト、放課後には丸めて紙ボールに変身させたりと、幼い頃に微かな思い出があるワラ半紙も、今はもうあまり出番がないのかと思うと少しばかり寂しくもなる。

旧新田小学校校舎を訪ねて


在りし日の旧新田小学校校舎

今はもうほとんど見かける事が少なくなった木造校舎であるが、木の文化が古くから根ざした日本が誇る世界最古の木造建築「法隆寺」は1300年の風雪に耐え、今も堂々と生きている。

木造校舎独特の木の温もりは、単に人々の心に郷愁を呼び起こすだけでなく、それ自体が日本人の文化遺産で一つである様に思う。

旧新田昭和校舎は、大阪府北部地震以降、安全配慮より一般公開は行われていなかったが、2021年から秋の一般見学会も再開される様になった。

見学を希望される方は、豊中市の社会教育課文化財保護係へ電話にて問い合わせをすれば状況に応じてご対応頂ける様だ。

豊中市ホームページ

【参考文献】
学校むかしむかし 旧新田小学校を訪ねて
なつかしの小学校図鑑

今回行った場所

旧新田小学校校舎

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