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阪神間の名建築を、映画「日本のいちばん長い日」に思いを馳せて巡ってみる

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阪神間とモダニズム文化

“阪神間” とは読んで字のごとく “大阪と神戸の間” という意味ですが、その地域概念というか定義は至って曖昧で、なんとなく西宮市の武庫川あたりから西、神戸市中央区ぐらいから東のエリアがその地域感という方が多いのではないでしょうか?

“阪神間” というと何となく山手エリアで、“阪神” というと海側のイメージなのは、やはり阪神電車や阪神タイガースの影響なのでしょうか?

芦屋市 「業平橋」

大大阪(だいおおさか) と呼ばれ、戦前まで日本一の大商業都市であった大阪の富豪たちや、古くから栄える灘の酒蔵会社の創設者などが、六甲山系と海に囲まれた自然豊かな理想的な阪神間の地に邸宅を構え、それらの影響もあり “阪神間モダニズム” と呼称される豊かな文化が100年以上前に開花されました。

モダニズムってなんかいい響きですよね。
日本の古き良き時代のロマンみたいなものを感じます。

阪神間や神戸エリアには、西洋の建築様式と古き日本の建築文化が融合された歴史的建造物が、戦争と阪神淡路大震災を乗り越えてなお、幾つか点在しています。

終戦をテーマにしたノンフィクション映画「日本のいちばん長い日」

「お盆」は、8月15日を中心とした期間に祖先の霊を供養する日本特有の行事です。
そして8月15日はもうひとつ、僕たち日本人にとって決して忘れてはいけない日。

今から73年前「大東亜戦争終結ノ詔書」を昭和天皇が朗読した、いわゆる「玉音放送」がラジオ放送され、日本国にポツダム宣言の受諾と軍の降伏の決定が伝えられた終戦の日でもあります。

昭和天皇や当時の閣僚たちが御前会議において敗戦・降伏を決定し、ポツダム宣言の受諾が決定した1945年(昭和20年)8月14日から、翌15日の玉音放送までの戦争終結に至る激動の24時間を描いた一本の映画があります。

“日本のいちばん長い日”

昭和史研究の第一人者として知られる半藤一利氏のノンフィクション小説が原作とした作品は、1967年に映画化され、2015年に原田眞人監督によってリメイクされました。

戦争終結は、戦争を知らない僕が生きる「平和な日本」が70年以上前に始まったスタート地点です。 “戦争を終わらせる” ということに多くの困難があり、それを乗り越えるために命を賭けた人たちがいた。

太平洋戦争末期、戦況が困難を極め「一億玉砕論」の声も上がる中、「降伏か?本土決戦か?」日本最大の決断がくだる。

観終わった後、心にズシッっと響くこの映画。
実は2015年リメイク版の映画の撮影の多くが、関西地方、特に 阪神間に現存する歴史的建造物を舞台 行われてるんですよ!

歴史的建造物マニアの僕にとっては涎垂モノのことで、スクリーンには見覚えのある場所が結構あって、ストーリーとはまた別の興奮を覚えました。

今回は劇中に出てくる “阪神間のロケ地” を映画に思いを馳せながら巡ってみたいと思います。

旧乾邸住宅

まずは、神戸市東灘区を代表する歴史的建造物のひとつ 旧乾邸住宅

俳優、山崎 努さんが扮する、時の内閣総理大臣「鈴木貫太郎」の官邸として登場する築80年のこの大邸宅は建物全体が神戸市指定有形文化財に、また、庭園も一部を除いて神戸市指定名勝となっています。

阪神間モダニズムを象徴する大邸宅は、まさに首相官邸にもふさわしい風格と佇まいを感じさせます。

乾汽船株式会社を設立した乾新治氏の自宅として昭和11年頃に建てられたこの大邸宅は、この時代に関西を中心に商業ビルの秀作を多く残した 渡辺節 の設計です。渡辺氏の作品は欧米の伝統的な様式と、日本古来の様式とを折衷する事で独特の世界感を創りだしています。同じ神戸市では旧居留地の商船三井ビルディングが、同氏の設計として有名ですよね。

渡辺節 設計 「商船三井ビルディング」

豪華絢爛「旧乾邸」の内装

「旧乾邸住宅」の内部のデザインは、イギリス中世のチューダー時代や近世のアダム様式など、イギリスの歴史の中で培われてきた建築様式や意匠が随所に取り入れられて、独特の空間が演出されています。

旧乾邸 「ゲストルーム」

鈴木首相が国務大臣や陸海相らと懇談する場面や、首相が聖断を昭和天皇に求める決意を告げる場面など、旧乾邸のゲストルームで緊張感のある数多くのシーンが撮影されていました。

同邸宅は普段は一般公開されていませんが、年に2回ぐらい不定期で特別観覧が行われています。 開催前に神戸市のホームページで告知されますので、ご興味のある方はマメにチェックしてみて下さい。

兵庫県公館

同じく首相官邸内の大会議室として登場するのが、兵庫県公館 です。
兵庫県公館は、明治35年(1902)年に兵庫県本庁舎として建設された歴史的文化遺産であり、国の登録有形文化財に登録されています。

時の内閣たちが大円卓で膝を突き合わせ、ポツダム宣言を受諾すべきか否かについて、緊張感のある閣議を繰り広げるシーンが兵庫県公館の第一会議室で撮影されています。

兵庫県公館 「第一会議室」

この建物は神戸大空襲で外壁以外の全てが焼失し、これまで二度にわたっての大改修工事が行われています。 内部のしつらえは全体的に綺麗になりすぎてて、僕的には残念ながらあまり萌えるものがありませんでした。

現在は県の迎賓館および県政資料館として使用されている兵庫県公館。
意外と知られていないのですが、初代の兵庫県知事が 伊藤博文 ってご存知でした?

長州藩士だった伊藤博文は、大政奉還後、明治新政府政権となって初めての外交事件である「神戸事件」の解決の功労が買われて初代知事に任命されるのですが、なんとその時27歳! 藩閥政治の時代とはいえ4度も総理大臣になる人って若い頃から偉いんですね。

神戸大学 六甲台本館

劇中のオープニングシーンで鈴木首相をはじめとする重臣たちと、第40代の首相である東條英機が口論を交わすシーンなどが撮影された 神戸大学 六甲台本館

写真の階段前のシーンから映画が始まるわけですが、俳優 故 中嶋 しゅうさんが演じた、東條英機が本人にくりそつで驚き。

昭和初期に旧神戸商業大学として建設された、こちらの本館や講堂、兼松記念館などは、室内外ともに重厚な意匠を備えており、これらも国登録有形文化財に指定されています。

神戸大学六甲台本館 外観

神戸商業大学は東京商業大学(現在の一ツ橋大学)に次いで設立された日本で二番目の国立商業大学です。昭和初期の校地選定をめぐっては、大阪と神戸の争いとなったそうですが、大大阪と呼ばれ当時日本一の経済産業都市だった大阪よりも、国際貿易港である神戸が相応しいとの理由からこの地が選ばれました。

神戸商業大学よりも少し早く建設された、東京商業大学(一橋大学)学舎群とはロマネスク調の意匠を採用している点で共通しています。

御影公会堂

国道2号線沿い、石屋川の隣で独特の佇まいを見せる 神戸市立御影公会堂

劇中では “陸軍参謀本部” としてチラッと登場してます。特徴的なデザインの照明器具が映っていたのでピンときた方も多いのではないでしょうか?

御影公会堂は耐震工事を含めた大規模な改修工事が終わりましたね。

個人的には、外観・内部共に廃れた感のある雰囲気(褒め言葉です)が好きでした。この映画が撮影されたのは改修工事前になりますね。

ちなみにこの写真も改修工事前に記念に撮らせてもらった写真です。

旧甲子園ホテル

そして最後は本木雅彦さん演じる昭和天皇の宮城(キュウジョウ※今で言う皇居)として、その居室や、皇后との食事のシーンなどが撮影された 旧甲子園ホテル

旧甲子園ホテル(甲子園会館)の設計者はフランクロイド・ライトの愛弟子、遠藤新。 建物デザインはライトのそれにもよく似ていますが、随所に日本の伝統美が取り入れられ、壮麗な洋風建築の空間と巧みに調和しているのが特徴的です。

旧甲子園ホテル(武庫川女子大学 甲子園会館)は日本に残る数少ないライト式の建築であり、国の近代化産業遺産および登録有形文化財に登録されています。

【番外編】舞鶴赤煉瓦倉庫群

そうそう、兵庫と京都の県境に位置する舞鶴市の 赤煉瓦倉庫群 も出てましたね。

劇中で時の “海軍仮庁舎” として出てくるこの赤煉瓦の建物群は、1901年(明治34年)の旧海軍舞鶴鎮守府の開庁に伴い、明治期から大正期にかけて建設されたもの。

赤煉瓦倉庫群のうち8棟が国の重要文化財に指定されており、現在は「舞鶴赤れんがパーク」として一般公開されています。明治期の煉瓦造建造物フェチでもある僕にはたまらない場所でございます。

まとめ

「日本のいちばん長い日」では、今回巡った阪神間ゆかり建物をはじめ、京都・奈良・滋賀と、関西地方の由緒ある様々な歴史的建造物が出てきます。

ストーリーや歴史の描写をじっくりと噛みしめて観たあとに、劇中に出てくる建造物に目をやりながら反芻して観るのも、また違った楽しみがあるのではないでしょうか?

いやぁ…

ほんとに映画っていいものですねぇ

さいなら

さいなら

さいなら (*´ー`*)!

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ロケ地マップ

旧乾邸住宅 ※一般公開案内は神戸市HPから

兵庫県公館 ※一般開放日は毎週土曜日

神戸大学六甲台本館 ※一般見学は要確認

御影公会堂

旧甲子園ホテル(甲子園会館)※見学は予約制
公式ホームページ

舞鶴赤煉瓦倉庫群(赤れんがパーク)
公式ホームページ

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